最近はヨーロッパでも中世料理ブーム。
あちこちに専門レストランもできてい
ます。もちろんレシピ本も。ここでは
う本を参考にさせていただきました。
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「中世」と呼ばれる時代区分は、一般に「古代よりも後、近世よりも前の時代」、紀元5世紀から15世紀ぐらいと言われています。いまから1000年前後も昔のフランス(当時は「フランス」という国そのものも、あったようななかったような…。いちおうフランク王国が起源とされているようですが)で、人々はどんなものを食べていたのでしょうか?
絵画や彫刻、建築、あるいは衣服など過去に人間が作り出した「有形」の遺産の多くは、元のままの形で今日まで残っています。また、文学や歴史など文字に書かれた記録も今日読み解くことが可能です。ところが、味覚については記録のしようがない。「これはほっぺたがとろけるほどウマい」と思っても、食べてしまえばあとに何も残りませんから。文化の中で「食文化」の過去は深い闇に包まれているのです(音楽もこれに近いところがありますよね)。
というわけで、わがCSフランス語教室では、(前回のSoccaで調子づいたという事情も手伝って)「つくってやろうじゃないの」ということで全員一致したのでした(単に講師Mの暴走という見方もありますが)。
講師Mが厳選の上に厳選して底本とした(たまたま家の本棚にあっただけという指摘もありますが)のは、Odile Redon, Françoise Sabban et Silvano Serventi, La Gastronomie au Moyen Age — 150 recettes de Fance et d'Italie (Stock, Paris, 1991):抜粋したレシピのテキストはこちら。
この本によりますと、中世ヨーロッパのレシピ本にはいくつかあるものの、どれも素人には判読が難しいとのこと。材料の分量など、細かい解説が一切なく、「鶏肉を炒め、ほどよい色合いになったら塩とスパイスを加え、煮る」的に、極めておおざっぱにしか書かれていないからです。これはなぜかというと、そもそも当時の料理本は一般大衆を想定して書かれたのではなく、宮廷料理人などプロを相手に伝家のコツを伝えることが目的だったため(しかも、文字を読める人は限られていた)。江戸の料理本なんかも同じだそうです。
この本によりますと、中世ヨーロッパのレシピ本にはいくつかあるものの、どれも素人には判読が難しいとのこと。材料の分量など、細かい解説が一切なく、「鶏肉を炒め、ほどよい色合いになったら塩とスパイスを加え、煮る」的に、極めておおざっぱにしか書かれていないからです。これはなぜかというと、そもそも当時の料理本は一般大衆を想定して書かれたのではなく、宮廷料理人などプロを相手に伝家のコツを伝えることが目的だったため(しかも、文字を読める人は限られていた)。江戸の料理本なんかも同じだそうです。
この本には中世フランス語で書かれた原文も載っていますが、そんなわけで何とか読めたとしても、その料理をつくるには想像力と試行錯誤が必要。下記のレシピは、それを現代フランスの料理人が実際につくってみた上で、分量なども入れて私たち一般大衆向けに分かりやすく解説したものです。
(CSフランス語で、実際にこれらの中世フランス料理を再現したときの様子は、こちら「現代日本によみがえったフランス中世の宴会」のページで!)
ザンザレリ Zanzarelli
- 鶏スープ:2リットル(多めですが、美味しいので必ずおかわりしたくなります)
- 卵:8個
- おろし立てのパルメザンチーズ:200g
- 乾いたパンをすりおろしたもの(パン粉でもいいです):80g
- 糸状のサフラン:6本
- 粉スパイス(シナモン、生姜、ナツメグ、胡椒などの粉を混ぜたもの)
◇作り方
- おろしたチーズ、パン粉、卵を泡だて器で混ぜてどろっとした状態にします。各材料の量は、味や硬さのお好みに応じて増減します。
- 鶏スープを煮立たせたら、いったん火を消して、サフラン6本を入れ、スープがきれいに色づくまで数分間置きます。
- 再び鶏スープを煮立たせ、1の材料を一気に入れ、すぐに泡立て器でかき混ぜます。再度沸騰してきたらかき混ぜ、また沸騰したらかき混ぜるということを2~3回繰り返します。卵が固まり、クリーム状だったスープがもろもろの状態になってきたら、火から降ろして味をととのえ、香辛料をふんだんに加えてデーブルに出します。
(訳:藤谷知子/今津頼枝)
体験的後日談:「味見をした夫は、日本人らしく「お醤油をたらしたら一層おいしくなったと申しておりました。」(今津)
アーモンドミルクの白ポレー Porée blanche au lait d'amandes
- 長ネギ:一束(約700g)
- アーモンド:300g
- ジンジャーパウダー:12g
- ミックス・スパイス・パウダー
- カルダモン:小さじ1/4
- ナツメグ:小さじ1/4
- シナモン:小さじ1/4
- クローブ1個
- 塩
◇作り方
- 長ネギの白い部分を塩を加えてゆで、お湯を切って、ムーラン(裏漉し器)で濾します。
- 沸騰したお湯でアーモンドを数分ゆでます。取り出して皮をむき、ミキサーにかけます。これに水を加えてどろっとした状態にし、濾してミルクを絞ります。
- アーモンドミルクを1の長ネギと混ぜ、ジンジャーパウダーを加えて煮詰めます。
- 野菜料理として、熱いうちにスパイスを振り掛けていただきます。
リモニアまたはレモン風味チキン Limonia ou Poulet au citron
- 大きめの地鶏:1羽
- アーモンド:150g (100粒くらい) あれば生アーモンド
- 鶏のブイヨン:500cc
- 玉ねぎ:中2個(約80g)
- ラード(ブタの脂身):60g
- レモン絞り汁:1個分
- ホットスパイス(コリアンダー、クミン、シナモン、コショウなど):小さじ1
- 塩
◇作り方
- 鶏の内臓を取り除いてきれいにし、切り分けます。
- ブタの脂身を四角に切り、鍋に入れて溶かします。
- 玉ねぎといっしょに2の鶏肉をキツネ色になるまで炒めます。
- 残った脂身を取り出し、塩とスパイスを加えたあと、アーモンドミルクを注ぎ入れます。
- ひと煮立ちさせ、弱火で30〜40分煮ます。
- 鶏肉に火が通ったら、味を調え、レモン汁を加えます。
- ひと煮立ちしたら盛りつけます。150g(100粒くらい) あれば生アーモンド
◇作ってみて
- 1のアーモンドミルクは、10倍量となったら潰すのが大変になりました。水分を加えてもかなり密度の高いどろっとした感じです。
- 濾すと残りかすにブイヨンが残ってしまう(おいしそうでもったいない)ので、まずお湯500ccでアーモンドミルクを作り、これに粉末鶏ガラ出汁を溶かすことにしました。
- 濾すととても量が減ります。500ccで300cc?の謎がとけました。
(訳・解説:原 愛)
ホウレンソウのお粥 L'espinarde en brouet
- バター:大さじ2
- 薄切りにしたマッシュルーム:2カップ
- 大麦:1カップ
- ビーフブイヨン(自家製または市販のもの):10カップ
- ザク切りにしたホウレンソウ
- クミンシード:小さじ1
- コリアンダー粉:小さじ1
- 塩コショウ
◇作り方
- 鍋にバターを入れ、溶かします。
- マッシュルームと大麦を入れ、1分炒めます。
- ブイヨンを注ぎ入れ、クミンシード、コリアンダー粉、塩コショウを加え、中火で約30分煮ます。
- ホウレンソウを加え、さらに30分煮て出来上がり。
◇作ってみて
「見た目はちょっとアレだけど、超カンタン、激ウマい」というのが感想。
バターを溶かして、マッシュルーム入れて、大麦入れて、チャチャっと炒めて、水をどばっと入れて、固形ブイヨンとスパイスを放り込めば、9割方完了。日本の市販のブイヨンはしょっぱ目なので、レシピにある塩は最後に味を見て加えた方がいいでしょう(味付けは「ちょっと物足りないかな」ぐらいがちょうどいいんです)。あとは、弱火で煮込むだけ。
難しいところといえば、30分+30分放置する間に忘れてしまわないことぐらいでしょうか。
今回は大麦といっても日本でよくある押し麦を使ったので、かなりトロみが強かったですが、そのあと丸のままの大麦(orge perlé)でやったときは、わりとサラっとしたスープに、膨らんだ大麦が浮かんでいるという感じになりました。どちらも美味しいです。
(訳・解説:真下 俊樹=いちおう講師ということになっています)
ローストオニオンのサラダ Salade d'oignons rôtis
- 中位の甘い品種の玉ねぎ:800g(イタリア産の赤玉ねぎなど)
- オリーブ油
- 質のいいワインビネガー
- 粉スパイス(次のものを混ぜたもの)- ジンジャーパウダー:16g- シナモンパウダー:16g- 細かく刻んだ月桂樹の葉:16g- 細かく刻んだクローブ:4g
- 塩
- コショウ
◇作り方
- 暖炉があれば、玉ねぎをおき火の中に入れ、柔らかくなるまで置きます。
- 暖炉がなければ、玉ねぎをひとつずつアルミホイルで包み、高温(250℃)のオーブンで1時間加熱する。オーブンから取り出し、アルミをほどいて少し冷まします。
- 手で触れるくらいに冷めたら、真っ黒に焦げた玉ねぎの皮を取り、薄切りにして、サラダボールに入れます。
- 塩、コショウを加え、スパイス粉小さじ1/3を振りかけます。
- 食べる前にオリーブ油とワインビネガーを振りかけて混ぜます。
(訳:梅干野 幸子)
ブルボン・パイ Tourte bourbonnaise
ブルボン・パイのレシピには2つのバージョンがあります。
塩味のブルモン・パイ
卵4個をほぐし、乳脂肪35%の生クリーム250g、ブルーチーズ(フォークで押しつぶしたもの)または削ったグリュエールチーズ100gを入れて、全体がむらなく滑らかになるまでよく混ぜます。胡椒を少々加えて、あらかじめ用意したパイカップに注ぎ、中火(250℃)のオーブンで30分~35分焼く(表面がきつね色になったらできあがり)。甘いブルボン・パイ
上記のブルーチーズの代わりにクワルクチーズ(250g)を使い、砂糖120g、レモン(またはオレンジ)の汁と、削った皮を加えます。◇製作
先ずはクワルクチーズを探しました。クワルクチーズはドイツでよく食される酸味のあるフレッシュチーズです。輸入品は見当たりませんでした。国産も限られた牧場でしか製造していないようです。今回は長野県の清水牧場さんから送っていただきました。かわいい「梅もどき」の小枝を添えて送ってくださいました。
タルトについて
21cmのタルト型にパイ生地を敷いて、卵3個分で計算した混合物を入れました。焼成中は大きく膨れ上がるので、混合物は8分目まで入れます。コンベックの場合、250℃で訳と表面が焦げてしまうので、220℃で約15分、180℃に落として20分焼きました。
甘さ控え目でサッパリとした美味しさです。
(訳・解説:鈴木眞利子)
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