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2016/06/20

スローフード

講座テキスト

「スローフード」は、市民団体の地域ネットワークに根ざした国際団体で、食べる人にとっても、作る人にとっても、さらには地球にとっても良い食品に誰もがアクセスできるような世界をつくることを目指しています。


スローフードは、会員の会費で運営される非営利団体として1989年に設立されました。その目的は、ファストフードやファストライフという社会現象に対抗して、地域に昔から伝わる食品が消えしまわないように、自分たちが食べる食品やその生産現場、味、さらには私たちが日々食べものをどのように選ぶかが世界に影響を及ぼすことに対して市民に自覚をもってもらうことにあります。スローフードは、人は誰も質の高い食べものを食べる喜びという基本的人権を持ち、そのことを通して作物や伝統、文化の継承を守る義務をもつと考えます。スローフード・ネットワークは会員10万人を数え、世界各地の1500の地方支所(「コンヴィヴィウム」と呼ばれる)に所属しています。コンヴィヴィウムは、会員の拡大だけでなく、イベントやキャンペーンを通してこの運動を盛り上げています。また、質の高い食べものを小さい規模で持続的なやり方で作っている食の共同体「テッラマードレ」も忘れることはできません。

スローフード:フランスでの浸透はスロー

ル・モンド紙 2014年11月13日付

「美味しく(bon)、汚染がなく(propre)、公正な(juste)」食べものを推進するこの運動のわが国での反響は小さい。

ピエモンテ州トリノ市で10月末に開催された第10回「スローフード味本市」には、世界160カ国1000団体が参加し、5日間で約22万人の入場客が集まった。スローフードのモットーである「美味しく、汚染がなく、公正な」食べものをめぐって、講演会や討論会、ワークショップ、試食会などが、2年ごとに開かれるこのイベントを飾った。今年のテーマは、家族農業と食物生物多様性の保護。味本市の中心を占める「味の門(Arche du goût)」では、誰でも自分の地域の貴重な産物を展示できるようになっており、何千もの「消えつつある」食べものが展示・保存されていた。グローバル化する世界の潮流に逆らう取り組みだ。

千人に満たないフランスの会員数

「他の国の人たちに向かって、あれを作れ、これを食べろとは言えません。私たちの役割は、それぞれの地域の労働とアイデンティティーの価値を高めることで、その地域の食の主権が尊重されるように応援することなのです。そうすることで、各地の地域経済の価値が高まれば、どんな多国籍経済よりも強くなれる。」スローフード運動の創設者カルロ・ペトリーニさんは、こう力説する。
 
世界で10万人以上の会員を数えるこのスローフード運動だが、フランスでは無視とは言わないまでも知名度は低く、会員は約30のコンヴィヴィアム(地方支所)を合わせて千人以下。ペトリーニさんが嘆くのも無理はない。「フランスをこよなく愛するこの私にとって、この現状には本当に胸が痛みます。フランスはブリア=サヴァランを産んだ国です。この人は私の思想上の恩師であり、美食を栄養学だけでなく、物理学や歴史、経済、政治などまでふくめた全体論的科学として位置づけた人です。フランス人はブリア=サヴァランのアフォリズムをこよなく愛していますが、彼の言葉の中身をすっかり忘れてしまっているのです。」

「汚染がなく、公正な」が忘れられている

「スローフード・フランス」は1989年に設立されたが、その後「根付く」ことなく、3年前には解散にまで至った。パリ・バスチーユ地区のコンヴィヴィアム長のバスチアン・ボーフォールさんは、こう説明する。「理由は色々ありますが、フランスという国の性格が大きいのでしょうね。各地域には個性があるのに、政治的には非常に集権化されている。でも、フランス人の性格もあるでしょう。気位が高くて自分の国が一番だと思っていて、外国生まれで、しかも英語の名前まで付いた運動が、自分たちの食べものについて教えを垂れることがあるなんて、理解できないわけです。もうひとつ言えば、スローフード・フランスの運営が、集まって美味しい夕食をとるだけの美食家グルーブに長い間まかされていたという事情もあります。彼らは「美味しい」ことにしか目が行かず、「汚染がなく、公正な」という部分を見失っていたのです。」

カルロ・ペトリーニさんは、これはフランス特有の分裂症の表れだという。「フランス人は、一方で美食を語りながら、他方では食品の経済性を語り、この二つを結びつけようとしない。」だが、こう言うペトリーニさんも、最近フランスでも「料理が環境や経済、地域と密接に結びついているという自覚をもった素晴らしいシェフや生産者」が現れてきており、スローフードかどうかは別としても、現状を動かす可能性があると認めている。

[訳:(CSフランス語受講生)今津頼枝, 深澤靖子, 藤田昌一]


日本の食べものは「公正(juste)?」:タイの日本向け規格タマネギ



日本の食べものは「汚染がない(propre)普通の牛乳生産


日本のスローフードの代表:木次乳業(島根県)



新たなスローフード開発:伝統野菜の掘り起こし